ビジネスの効率化や生産性向上のために、ChatGPTを活用する企業が増えています。しかし「ChatGPTをどのように自社業務に取り入れたら良いかわからない」「具体的な活用事例が知りたい」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで、この記事では業界別にChatGPTのビジネス活用事例12選を紹介します。導入の流れや注意点も解説するので、ChatGPTの活用を検討している方は最後までご覧ください。
ChatGPTの活用範囲
ChatGPTの主な活用範囲は、次の7つです。
- 情報収集
- メール・資料の執筆
- 商品・企画のアイデア出し
- 会議・資料の要約
- データの分析・整理
- コーディング
- 顧客からの問い合わせ対応
情報収集
ChatGPTは市場調査や競合分析など、リサーチ業務に広く活用されています。たとえば、ユーザーが「今後成長が見込まれる業界は?」や「ターゲット市場のニーズを教えて」と尋ねると、ChatGPTは関連する情報を整理して出力してくれます。
これにより、膨大なデータを手作業で調べる手間が省け、短時間で全体像をつかむことが可能です。
メール・資料の執筆
ChatGPTを使うと、お礼メールや日程調整メールなどの定型的なビジネスメールを迅速に作成することが可能です。たとえば、取引先への請求書送付や打ち合わせの日程調整など、事前に目的や詳細を指定することで、ChatGPTが適切な文体でメール本文を生成してくれます。
また、ChatGPTは多言語に対応しているため、英語や中国語でビジネスメールを作成する際にも役立ちます。
商品・企画のアイデア出し
ChatGPTは、商品やサービスの新しいアイデアを考える際にも有効です。具体的には、ターゲット層の職業や価格帯、製品ジャンルなどを指定することで、その条件に合ったアイデアを複数提案してくれます。
これにより、ブレインストーミングや初期段階のアイデア出しを効率よく進められます。
会議・資料の要約
会議の議事録から議論のポイントや決定事項を自動的に抽出し、簡潔に要約することも可能です。これにより、会議に参加できなかったメンバーや、会議内容を確認する必要がある人に対して、迅速かつ正確に情報共有できます。
また、報告書や研究資料を扱う場合、文書から重要な情報だけを抽出し、短時間で内容を把握する際にも役立ちます。
データの分析・整理
ChatGPTはCSV形式のデータを読み込み、指定された条件に基づいて集計や分析を行えます。たとえば、売上データや顧客データをインポートして「上位10店舗の売上高を抽出」「売上の傾向をグラフ化」といった指示を与えると、その結果を自動的に生成してくれます。
また、外部ツールと連携すると、分析結果をグラフや表形式で視覚化することも可能です。
コーディング
ChatGPTはPythonやJavaScript、HTMLといったさまざまな言語のコードを生成できます。たとえば「Pythonでファイルの読み込みを自動化するコードを作成してください」といったプロンプトを入力すると、具体的なコードを出力することが可能です。
また、エラーメッセージを入力すると問題点や改善案を提示してくれるため、デバッグ作業の効率化にも役立ちます。
顧客からの問い合わせ対応
ChatGPTは、顧客からの問い合わせに対応するための自動応答システムとして利用されています。たとえば、企業のカスタマーサポート部門では、よくある質問(FAQ)や基本的な問い合わせに対して、自動で回答するチャットボットとして活用することが多いです。
これにより、オペレーターが対応する問い合わせを減らし、人的リソースの負担を軽減できます。
【業界別】ChatGPTのビジネス活用事例12選
ChatGPTのビジネス活用事例を、業界別に12件紹介します。
- 電機業界(パナソニックグループ)
- IT業界(株式会社メルカリ)
- 化学業界(三井化学株式会社)
- 食品業界(日清食品ホールディングス株式会社)
- 自動車業界(メルセデス・ベンツグループ)
- 商社業界(伊藤忠商事株式会社)
- 金融業界(住信SBIネット銀行株式会社)
- 文具業界(コクヨ株式会社)
- コンサルティング業界(株式会社大和総研)
- 人材業界(株式会社リブセンス)
- 情報通信業(弁護士ドットコム株式会社)
- 地方自治体(山形県庁)
電機業界(パナソニックグループ)
パナソニックコネクト株式会社は、ChatGPTをベースにしたAIアシスタント「ConnectAI」を導入し、ビジネス業務の効率化を進めています。2023年2月から導入されたこのAIアシスタントは、全社員の業務生産性向上を目指しており、1年間で約18.6万時間の労働時間削減を達成しました。
具体的には、単純な質問への応答や検索エンジン代わりとして使用されることで、1回あたり平均20分の時間を削減するなど、日常業務の効率化に大きく貢献しています。また、自社固有のデータ(ウェブページやニュースリリースなど)を元に回答する自社特化型AIも試験運用し、戦略策定や商品企画といった長時間かかる業務でも大幅な効率化が実現されています。
出典元:パナソニック コネクト 生成AI導入1年の実績と今後の活用構想
IT業界(株式会社メルカリ)
株式会社メルカリでは、出品した商品への改善提案機能「メルカリAIアシスト」を開発し、簡単に購入されやすい文章に修正できる機能を提供しています。さらに、社内利用促進のため、業務情報を入力できるメルカリ社員専用のChatGPTを作成しました。
翻訳やドキュメントサーチ機能などを搭載し、作業効率を向上させることに成功しています。
出典元:生成AIによるプロダクトと生産性向上の舞台裏@2024.04.16
化学業界(三井化学株式会社)
三井化学株式会社は、GPTとAIツール「IBM Watson」を融合させた取り組みを通じて、製品の新規用途探索における精度と効率を大幅に向上させました。具体的には、技術資料や論文の情報を集めた辞書作成やデータ抽出の作業が大幅に効率化され、4か月で辞書作成数が約10倍に増加しました。
さらに、新規用途の抽出作業効率は3倍に向上し、新規用途発見数も約2倍に増加するという成果が得られています。
食品業界(日清食品ホールディングス株式会社)
日清食品ホールディングスは、生成AI「NISSIN AI-chat powered by GPT-4 Turbo」を導入し、さまざまな業務の効率化と生産性向上を図っています。たとえば、営業部門では生成AIを活用して業務を効率化するプロジェクトを立ち上げ、ターゲット設定やインサイト調査、プレゼン資料の作成などの業務を効率化しました。
また、マーケティング部門では新商品のフレーバー提案やプロモーション案の検討、コピー案の作成などで生成AIが活用されています。
出典元:生成AI活用の取り組み
自動車業界(メルセデス・ベンツグループ)
2023年、メルセデス・ベンツは試験的にChatGPTを自動車の音声制御機能に搭載することを発表しました。これにより、従来の音声アシスタント機能が強化され、ドライバーは目的地の詳細を尋ねたり、夕食のレシピを提案してもらったりと、より自然な会話ができるようになります。
運転中でも手を使わずに複雑な質問やリクエストに対応できるため、運転の快適性と安全性の向上が期待されています。
出典元:Mercedes-Benz takes in-car voice control to a new level with ChatGPT
商社業界(伊藤忠商事株式会社)
伊藤忠商事株式会社では、生成AIの導入に向けて「生成AI研究ラボ」を立ち上げ、システム開発や検証作業を進めています。具体的には、AzureとChatGPTを組み合わせた「Azure OpenAI Service」を活用し、議事録の作成や文章の要約などの業務で効率化を図りました。
2023年7月25日から全社的にChatGPTを導入し、約4,200人の社員が利用できる環境を整えています。
出典元:伊藤忠商事が「社内版ChatGPT」を4200人に導入開始…“商社が使う生成AI”への期待
金融業界(住信SBIネット銀行株式会社)
住信SBIネット銀行は、2024年8月からカスタマーセンターの電話窓口において、ChatGPTを搭載したバーチャルアシスタントを導入しました。このバーチャルアシスタントの導入により、顧客からの電話問い合わせに対して迅速かつ自動的に応答できるようになり、顧客の待ち時間を削減しました。
この取り組みにより、住信SBIネット銀行は顧客対応の効率化を図りつつ、高品質なサービス提供を実現しています。
出典元:住信SBIネット銀行、GPT-4oモデル「生成AI」を活用し、電話自動応対を実現
文具業界(コクヨ株式会社)
コクヨ株式会社は、デジタル人材教育・実践プログラム「KOKUYO DIGITAL ACADEMY」の一環として、生成AIを活用した実践プログラム「GPT-Lab」を導入しました。このプログラムは、社員が生成AIを活用して業務課題を解決するスキルを習得することを目的としています。
この取り組みでは、非エンジニアの社員が自ら生成AIを用いてアプリケーションを開発し、アンケートの設問生成や情報収集の効率化など、多岐にわたる業務改善に取り組んでいます。
出典元:生成AIの実践教育プログラム「GPT-Lab」で、16個の生成AI業務アプリを社員が開発
コンサルティング業界(株式会社大和総研)
株式会社大和総研では、マクロ経済や金融資本市場に関するレポート作成において、ChatGPTがエコノミストの判断・考察をサポートし、レポート本文の草案を自動生成しています。これにより、レポートの作成時間は従来よりも約50%短縮され、迅速な情報提供が可能となりました。
効率化によって生まれた時間は、レポートの質向上や新たなテーマの取り扱いに充てられる予定です。
出典元:大和総研、調査レポートの作成に生成AI(ChatGPT)を活用
人材業界(株式会社リブセンス)
株式会社リブセンスが運営する転職口コミサイト「転職会議」では、ChatGPTを活用して企業の口コミを要約する新機能を導入しました。この機能により、360万件以上の口コミをわかりやすく要約し、ユーザーが短時間で企業の特徴・社風を把握できるようになります。
転職活動や就職活動は限られた時間で行う必要があるため、この機能により、仕事選びがよりスムーズになると期待されています。
出典元:転職口コミサイト『転職会議』、ChatGPTのAIを活用した企業口コミの要約情報を提供開始
情報通信業(弁護士ドットコム株式会社)
弁護士ドットコムは、ChatGPTを活用した法律相談チャットサービスの試験提供を開始しました。このサービスでは、ユーザーがWebサイト上で法律に関する質問を入力すると、過去に蓄積された125万件以上の法律相談データをもとに、AIが自動的に適切な回答を生成します。
ユーザーはパソコンやスマートフォンから1日5回まで無料で質問ができ、すぐに回答を得られるため、手軽に法律相談することが可能です。
地方自治体(山形県庁)
山形県庁は、業務効率化を目的として2023年10月からChatGPTを導入し、約3カ月で360人の職員が利用を申請しました。ChatGPTはあいさつ文作成や表計算ソフトの操作自動化などに活用され、作業時間が半減するなどの効果が報告されています。
特に、県の会計課ではエクセルデータを基に検査通知書やメール本文、指導文面のPDF化を自動作成するプログラムが開発され、作業時間を大幅に短縮することに成功しました。
ChatGPTをビジネスに活用するときの注意点
ChatGPTをビジネスに活用する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- プロンプトに具体的な指示を与える
- 機密情報や個人情報は入力しない
- 出力内容を必ず確認・検証する
プロンプトに具体的な指示を与える
ChatGPTの回答精度や有用性は、ユーザーが与えるプロンプト(指示文)の質に大きく依存します。具体的な指示を与えることで、AIによる曖昧さをなくし、より正確で期待通りの結果を出力できるようになります。
たとえば、プロンプトにおいて5W1H(誰が・何を・いつ・どこで・なぜ・どのように)を明確にすることや、出力形式や役割設定を指定することが効果的です。
機密情報や個人情報は入力しない
ChatGPTは、特定の条件下でユーザーが入力したデータを学習に利用することがあります。これにより、機密情報や個人情報を入力すると、その情報が他のユーザーに漏洩するリスクが生じます。
そのため、多くの企業ではChatGPT利用時に機密性の高い情報や個人データを入力しないルールを設けています。
出力内容を必ず確認・検証する
ChatGPTは非常に高度な自然言語処理能力を持っていますが、生成される回答が常に正確とは限りません。特に法的な文書や技術的な内容では、誤った情報が含まれる可能性があります。
そのため、生成されたコンテンツの信頼性を確保するには、人間によるチェック体制を整えることが重要です。
ChatGPTをビジネスに活用する流れ
ChatGPTをビジネスに導入する際は、以下の手順を実施しましょう。
- ① 具体的な目標を設定する
- ② 担当者がAIの基礎を学ぶ
- ③ 小規模で試験運用する
- ④ チーム全体でAI活用法を学ぶ
- ⑤ 本格的に導入する
① 具体的な目標を設定する
まず最初に、ChatGPTを導入する目的や目標を明確にしましょう。たとえば、経理業務効率化やカスタマーサポートの自動化、データ分析の支援など、期待する効果を具体的に定めます。
これにより、AI導入の効果を測定しやすくなり、目標達成に向けた適切な改善が行えるようになります。
② 担当者がAIの基礎を学ぶ
目標を設定したら、担当者がAIの基礎知識を身につけましょう。生成AI(ChatGPT)の仕組みや注意点、適切なプロンプト設計などを理解することで、効果的にAIを活用できるようになります。
AIの知識は書籍やYouTubeでも学べますが、効率よくスキルを習得したいなら学習サイトの利用がおすすめです。たとえば、弊社の「AI Academy」を使うことで、LINEボットや診断プログラムなどを作りながら、業務に必要な知識を効率よく学べます。
③ 小規模で試験運用する
いきなり全社的に導入するのではなく、小規模なプロジェクトや特定のチームで試験運用を行いましょう。試験的に運用を始めることで、リスクを最小限に抑えつつ、実際の業務環境での有効性を確認できます。
また、得られたフィードバックをもとに改善点を見つけ、本格導入前に最適化することで、導入後のトラブルや無駄なコストを防ぐことが可能です。
④ チーム全体でAI活用法を学ぶ
試験運用で効果が確認された後は、チーム全体でChatGPTの活用法を学びましょう。AIツールの使い方だけでなく、業務への適用方法やリスク管理についても理解しておくことが重要です。チームでAIを学ぶ際は、AI関連の研修を実施するのがおすすめです。
たとえば、AI研修サービス「AI Academy Business」では、データ分析の手法やPythonの基礎など、490を超えるコンテンツで学べます。さらに、社員の学習進捗を確認できる機能が搭載されているため、メンバー全員が挫折することなくスキルアップさせることが可能です。
もし、ChatGPTの使い方を1から学びたい場合は「アガルートの法人研修」で実施されている「ChatGPTビジネス活用研修」もおすすめです。ChatGPTの基本から高度な使い方までを学び、自分の業務に必要なプロンプトを自ら作成できるスキルを身につけられます。
AI関連の研修を実施しようと考えている方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:【2024年最新版】ChatGPTビジネス活用研修おすすめ5選!研修の目的や内容について紹介
⑤ 本格的に導入する
チーム全体がAIの知識を身につけたら、本格的な導入を進めましょう。まずは、既存システムとの統合やカスタマイズを行い、日常業務に組み込みます。その後、運用しながら定期的な評価と改善を行うことで、AIをスムーズに活用することが可能です。
まとめ
この記事では、ChatGPTのビジネス活用事例や導入の流れ、注意点について解説しました。ChatGPTを活用することで、情報収集やデータ分析、顧客対応など幅広い業務を効率化することが可能です。
また、業界別の具体的な事例を参考にすることで、自社での活用方法をイメージしやすくなります。ChatGPTを導入して業務効率を向上させたい方は、小規模で試験運用を行いながら、適切な活用方法を模索してみましょう。
ChatGPTをビジネスに活用する際は、まず担当者がAIの基礎知識を習得することが重要です。もし、AIの知識に不安を感じている場合は「AI Academy」を活用してみてください。実際にシステムを作りながら学習を進められるため、業務に必要なスキルを効率よく身につけられます。
また、チームや社内全体でAIを学ぶ際は、AI研修サービス「AI Academy Business」がおすすめです。Pythonの文法やデータベース操作などのコンテンツが揃っているだけでなく、各メンバーの学習進捗を管理する機能が搭載されているため、全員が挫折することなくAIの知識を習得できます。ChatGPTの使い方を1から学びたい場合は「アガルートの法人研修」で実施されている「ChatGPTビジネス活用研修」を利用してみてください。