ITパスポートは、就職活動やスキルアップのきっかけとして注目されています。しかし「取得する意味はある?」「実務にどう役立つのかわからない」と疑問に思っている方も多いでしょう。
そこで、この記事ではITパスポートが「意味ない」と言われる理由について解説します。取得するメリットや、向いている人の特徴も紹介するので、受験を検討している方は最後までご覧ください。
ITパスポートが「意味ない」と言われる理由

ITパスポートが「意味ない」と言われる理由は、主に次の5つです。
- 独占業務がないから
- 実務に直結しにくいから
- 難易度が低いから
- 差別化しづらいから
- 昇進・昇給につながりにくいから
独占業務がないから
ITパスポートには、資格保有者だけが行える独占業務がありません。たとえば、システム開発やネットワーク構築、データ分析といったIT業務は、ITパスポートを持っていなくても従事できます。
医師や弁護士のように「この資格がなければできない仕事」がないため、あえて取る必要があるのかと迷う人も多いです。
実務に直結しにくいから
この試験では、コンピュータの仕組みや情報セキュリティの基礎、プロジェクトマネジメントの理論などを幅広く学びます。しかし、出題される内容はあくまで基本的な内容であるため、現場での具体的な作業に直結しにくいのが実情です。
たとえば、情報セキュリティの基本概念を学んでいても、実際にセキュリティの問題点を発見して修正する、侵入検知システムを構築するといった技術は、実務経験を通じて習得する必要があります。このように、試験内容と日々の業務にギャップがあるため「実務ではあまり使えない」と感じる人も少なくありません。
難易度が低いから
ITパスポートは、国家試験の中では比較的やさしい部類に入ります。合格率は例年50%程度で推移しており、過去問を繰り返し解いていれば十分に合格を狙えるレベルです。
初学者でも独学で合格できる可能性が高く、150時間程度の勉強時間で合格を目指せるため「誰でも取れる資格」と見なされることもあります。
差別化しづらいから
ITパスポートは受験者数が多く、取得のハードルも高くないことから、資格で他の人と差をつけにくいという側面もあります。そのため、就職・転職の場面で履歴書に書いても「基礎知識があることの証明」にはなりますが、それだけでは強いアピールにはなりません。
IT現場で即戦力として評価されるには、実務経験や応用情報技術者試験などの上位資格が必要とされることが多いです。
昇進・昇給につながりにくいから
企業によっては、特定の資格を取得することで昇進や昇給につながる制度を設けている場合があります。ただし、その対象となるのは応用情報技術者試験のような専門性の高い資格であり、ITパスポートが昇格要件に含まれるケースはそれほど多くありません。
仮に資格手当の対象となっていても、支給額は月額数千円程度にとどまるため、投資効果が低いと感じる人もいるでしょう。
ITパスポートを取得するメリット

ITパスポートは「意味がない」と言われることもありますが、次のようなメリットもあります。
- ITに対する苦手意識をなくせる
- 上位資格への足がかりになる
- 学習習慣が身につく
ITに対する苦手意識をなくせる
この資格はITの基礎知識を幅広くカバーしているため、初心者でも無理なく理解を深められます。たとえば、スマートフォンを使う中で耳にする「ハードウェア」「ソフトウェア」「ネットワーク」「セキュリティ」などの用語を学ぶことで、ITの話題に対して漠然とした不安を感じなくなるでしょう。
また、セキュリティに関する基礎知識を身につけることで、不正アクセスや詐欺被害への警戒心が高まり、安心してネットを使えるようになります。さらに、情報の信頼性を見極める力も養われるため、ITを「怖いもの」から「便利で安全に使えるもの」として前向きに捉えられるようになります。
上位資格への足がかりになる
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験といった情報処理技術者試験の上位資格では、より専門的な内容や実務に直結した知識が求められます。そのため、十分な準備がないまま挑戦すると内容の難しさに圧倒され、途中で挫折してしまう人も少なくありません。
その点、ITパスポートは初心者がつまずきやすい用語や考え方を丁寧にカバーしており、基礎的な知識を無理なく身につけられます。さらに、情報処理技術者試験に共通する出題形式や問題文の構成にも触れられるため、上位資格に挑戦する前の準備としても最適です。
学習習慣が身につく
学生のうちは自然と学ぶ習慣が身につきますが、社会人になると日々の業務に追われ、勉強時間を確保するのが難しくなりがちです。しかし、資格取得という明確な目標を持つことで、日々の生活の中に「学ぶ時間」を意識的に組み込むようになります。
ITパスポートは、初学者でも取り組みやすい国家資格として知られており、参考書や学習サービスも充実しています。通勤時間にアプリを使って勉強したり、休日の空き時間にテキストを読み進めたりと、自分のペースで無理なく学習を続けられる点も大きな特長といえるでしょう。
ITパスポートの取得が向いている人

以下の項目に当てはまる方は、ITパスポートの取得を検討してみましょう。
- IT業界に就職したい学生
- IT部門に異動したい社会人
- 業務効率化を図りたい事務職
- エンジニアとスムーズにやり取りしたい営業職
- 何か資格を取っておきたい内定者
IT業界に就職したい学生
IT企業の採用担当者は、未経験者であっても基本的なIT知識を備えているかどうかを重視する傾向があります。情報系の学生であれば一定のIT知識を持っていると判断されやすいですが、文系など他学部出身の場合は、ITへの理解度を評価しづらいです。
そのため、ITパスポートのような基礎的な資格を取得しておくことで、一定のITリテラシーを有していることを客観的に示せます。また、自主的に資格取得に取り組んだ姿勢は、業界への関心や意欲をアピールする材料となり、就職活動を進めるうえでプラスに働くでしょう。
IT部門に異動したい社会人
異動を申し出る際には、希望する理由だけでなく、その仕事に向けた準備ができていることも伝える必要があります。ITパスポートを取得していれば、ITの基礎を学んでいることを客観的に伝えられ、説得力を補う材料になるでしょう。
また、ITパスポートではシステム開発や情報セキュリティ、マネジメントなどの実務に関係する幅広い分野に触れられます。これらの基礎を押さえておけば、異動先の業務を理解しやすくなり、現場にもスムーズに順応できるようになります。
業務効率化を図りたい事務職
事務作業の中には、パソコンの操作やデータ管理、業務フローの改善など、ITの知識が役立つ場面が数多くあります。こうした業務に情報処理の考え方を取り入れることで、作業時間の短縮やミスの削減につながります。
さらに、業務の仕組みや流れを理解しておけば「この作業にはどんな意味があるのか」「どうすればより効率化できるのか」といった点を論理的に考えられるようになるでしょう。
エンジニアとスムーズにやり取りしたい営業職
営業職としてIT製品やシステムを扱う場合、エンジニアとの連携は欠かせません。ただ、専門用語が飛び交うやり取りの中で、内容を正確に理解できなかったり、意図がうまく伝わらなかったりする場面もあるでしょう。
このような場面で役立つのが、ITパスポートを通じて得られる基本的なIT知識です。専門用語やシステムの仕組みをある程度理解していれば、エンジニアとの会話でも「何について話しているのか」がつかみやすくなり、やり取りもしやすくなります。
すべてを詳しく理解している必要はありませんが、相手の言葉の意味がわかるだけでも、コミュニケーションの質やスピードは大きく向上します。
何か資格を取っておきたい内定者
内定が決まったあと、入社までの期間を使って資格を取得したいと考える人もいるでしょう。そんな方におすすめなのが、ITパスポートです。業界や職種を問わず活用できる基礎的なIT知識が学べるため、配属先がまだ決まっていない段階でも取り組みやすい資格といえます。
必要とされる学習時間はおおよそ150時間といわれており、卒業論文や修士論文と並行しながら計画的に学習を進めることで、十分に合格を目指せます。入社前にITリテラシーを高めておけば、配属先で使われるITツールや社内システムにも順応しやすくなるでしょう。
ITパスポートとよく比較される資格

自分に合った資格を見極めたい方は、次の資格もチェックしてみましょう。
- 基本情報技術者試験
- 生成AIパスポート試験
- G検定
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITパスポートの上位に位置づけられる国家資格です。ITパスポートが「ITの基礎を幅広く理解すること」を目的とした入門レベルの試験であるのに対し、基本情報技術者試験ではITエンジニアに求められる基礎スキルが身についているかどうかが問われます。
そのため、出題範囲はプログラミングやアルゴリズム、データベースといったより専門的な技術分野が中心になります。
生成AIパスポート試験
生成AIパスポート試験は、テキスト生成AIや画像生成AIなどの基礎知識を問う資格です。ITパスポートがIT全般の基礎知識をカバーするのに対し、生成AIパスポート試験は生成AIの仕組みや活用方法に特化した内容となっています。
どちらも基礎から学べる構成になっているため、学びたい分野や業務内容に合わせて選ぶのがおすすめです。生成AIパスポート試験に興味がある方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:生成AIパスポート試験の難易度は?他資格との違いや勉強方法も解説
G検定
G検定(ジェネラリスト検定)は、AI技術に関する基礎知識を問う資格です。生成AIパスポート試験は生成AIの仕組みや活用法に特化していますが、G検定ではディープラーニングを中心とした幅広い内容が問われます。
そのため、生成AIに限らず、AI技術全般を体系的に学びたい人にはG検定の方が向いているでしょう。G検定について詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
関連記事:【2025年版】G検定が難しいって本当?難易度が高い理由や合格するポイントを解説!
ITパスポートに関するよくある質問

ITパスポートの取得を考えている方は、よくある質問もチェックしておきましょう。
- 受験資格はある?
- 何回でも受験できる?
- 効率よく合格する方法は?
受験資格はある?
ITパスポート試験には、受験資格や制限は一切ありません。年齢や学歴、職業などにかかわらず、誰でも受験できます。
社会人経験やパソコンスキルも不要なので、中学生から高齢の方まで、幅広い年代の方が挑戦できる国家資格となっています。
何回でも受験できる?
ITパスポート試験は、何度でも受験できます。合格するまで繰り返し挑戦できるため、途中で諦める必要はありません。
不合格だった場合は、過去問や模擬試験を使って苦手な分野を洗い出し、その分野を重点的に学び直しましょう。
効率よく合格する方法は?
効率よく合格したいと考えている方は、試験対策講座を活用してみましょう。動画で専門家の説明を見ることで、難しい内容も感覚的に理解しやすくなります。
たとえば、アガルートの「ITパスポート試験対策講座」では、初心者でも理解できるよう、データサイエンティストがビジネスシーンを踏まえながら丁寧に解説してくれます。この講座では試験範囲を約9時間で網羅できるため、仕事や学業などで忙しい人にもおすすめです。
独学でITパスポートを取得しようと考えている場合は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
関連記事:独学でITパスポートに合格するコツ5選!一発で合格しやすい人の特徴も解説
まとめ
この記事では、ITパスポートが「意味ない」と言われる理由や、取得するメリットについて解説しました。実務に直結しにくい、難易度が低いという声もありますが、ITの全体像を体系的に学ぶには効果的な資格です。
また、基礎的なITスキルを習得することで、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験などの上位資格にも挑戦しやすくなります。そのため、ITに苦手意識がある方やこれから知識を身につけたい方は、ITパスポートの取得を検討してみましょう。
どうやって勉強すればいいかわからないと悩んでいる場合は、試験対策講座を受講するのがおすすめです。たとえば、アガルートの「ITパスポート試験対策講座」では、約9時間で試験範囲を網羅できるため、忙しい方でも無理なく学習に取り組めます。
さらに、パソコンやスマートフォンなどのさまざまなデバイスに対応しており、通勤時間や休憩時間を有効活用できることも可能です。合格すると全額返金される特典も用意されているので、効率よく合格したい方はぜひ活用してみてください。