生成AIを業務に取り入れるためには、自社に適した活用方法を見極めることが大切です。しかし「どのように使えばいいかイメージできない」「何から始めればいいかわからない」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで、この記事では生成AIの活用事例を紹介します。各社の取り組みだけでなく、正しい導入方法についても解説するので、生成AIで生産性を上げたい方は最後までご覧ください。
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生成AIの使い方を検討している方は、次の事例を参考にしてみてください。
- トヨタ自動車株式会社（製造業）
- パナソニックコネクト株式会社（製造業）
- 株式会社日立ソリューションズ（IT業界）
- LINEヤフー株式会社（IT業界）
- 関西電力株式会社（電力業界）
- 東日本旅客鉄道株式会社（鉄道業界）
- 全日本空輸株式会社（航空業界）
- 三井住友海上火災保険株式会社（保険業界）
- 株式会社ひろぎんホールディングス（金融業界）
- 東急リバブル株式会社（不動産業界）
- イオンリテール株式会社（小売業）
- 大分市（地方自治体）
トヨタ自動車株式会社（製造業）
トヨタ自動車株式会社は、生成AIを活用したエンジン制御モデルの解析に取り組んでいます。モータースポーツの現場では、レースのたびにサーキット特性やレギュレーションに適したセッティングが必要になります。
これまでは熟練のエンジニアが複雑な制御モデル変更を行っていましたが、生成AIが制御モデルの解読をアシストすることで変更箇所を効率的に特定できるようになり、作業全体のスピードが向上しました。これにより、エンジニアが高度な制御仕様の調整作業に注力できるようになっています。
また、後継者不足で技術を継承できないという課題もありました。そこで、技術者が長年にわたり蓄積してきたチューニングの経験や分析手法などのノウハウを生成AIでデジタル化し、組織全体で活用する取り組みも進めています。
出典元：トヨタ自動車×富士通 モータースポーツ現場での生成AI活用
パナソニックコネクト株式会社（製造業）
パナソニックコネクト株式会社は、社内向けAIアシスタント「ConnectAI」を開発し、業務効率化とナレッジ活用を進めています。このアシスタントは、導入当初は質問対応が中心でしたが、現在では経理の決裁作成支援や法務の下請法チェックといった定型業務まで活用範囲が広がりました。
また、インハウスで開発・運営し、Gemini・ChatGPT・Claudeといった最新のAIモデルを自由に切り替えて試せる環境を整えているため、継続的に性能向上を図っています。2024年度には年間約45万時間の業務時間を削減し、削減した時間は前年比の2.4倍となりました。
全社向けの説明会を実施したところ、全社員の20%程度にあたる約2,000人が参加し、高度な業務にもAIを活用できる人材の育成が進んでいます。
出典元：「ConnectAI」が変える働き方。パナソニック コネクトが描く、AIと共創する未来
株式会社日立ソリューションズ（IT業界）
株式会社日立ソリューションズは、全社員が生成AIを活用できる環境を整備し、AI活用の拡大と定常業務の効率化を進めています。プロンプトの専門知識がなくても使えるAIアプリを導入したことで、社員の生成AI利用率は約30％から50％程度へと向上しました。
さらに、問い合わせ対応業務ではチャットボットを活用し、導入初月から人手による対応件数を約30％削減しています。また、会議内容の文字起こしデータから「えっと」「あのー」といった不要語を自動で取り除くアプリを開発し、会議関連業務の効率化を図っています。
出典元：株式会社日立ソリューションズ Alli LLM App Marketの導入事例
LINEヤフー株式会社（IT業界）
LINEヤフー株式会社では、全従業員約11,000人を対象に生成AIの業務活用を義務化し、生産性向上と働き方の変革を進めています。調査・検索では「まずはAIに聞く」、資料作成では「ゼロベースの資料作成を行わない」といった具体的なルールを策定し、業務効率の向上を図りました。
さらに、全社員へ「ChatGPT Enterprise」のアカウントを付与し、リスク管理やプロンプト技術の研修を必須化することで、安心して生成AIを活用できる環境を整えています。その結果、2025年7月14日時点で35件以上の業務効率化プロジェクトが進行しており、継続的なイノベーション創出につながっています。
出典元：LINEヤフー、全従業員約11,000人を対象に業務における「生成AI活用の義務化」を前提とした新しい働き方を開始
関西電力株式会社（電力業界）
関西電力株式会社は、OpenAIとの連携を通じて生成AIを全面的に活用したDXを推進しています。第一段階として「ChatGPT Enterprise」をDX推進人材に導入し、業務改革と新たな価値創出を目指しています。
さらに、生成AI活用事例を社内で創出・展開するため、AI専門家チーム「OpenAI CoE（Center of Excellence）」を設置し、推進体制を強化しました。また、火力発電事業ではデジタル発電所の実現に向け、運転・保全業務へのAI適用を検討しています。
そして、2030年頃の「AI産業革命」を見据え、営業や顧客対応の高度化に加え、経営判断を支援するAIエージェントの構築にも取り組む方針です。
出典元：ＯｐｅｎＡＩとの連携による生成ＡＩをフル活用したＤＸの加速
東日本旅客鉄道株式会社（鉄道業界）
東日本旅客鉄道株式会社は、信号通信設備の復旧支援に生成AIを導入し、輸送の安定性向上を進めています。2023年3月からは、首都圏の在来線信号設備の一部で、故障発生時に指令員の判断を支援するAIシステムを導入しています。
さらに、今後は無線通話から作業経過を自動生成し、推定原因や復旧見込時刻を提示するシステムの構築も進める予定です。また、首都圏の運行管理システムATOSでは、トラブル発生時の原因解析と対応策を提示する生成AIの実証実験を開始しました。
出典元：信号通信設備に「鉄道版生成 AI」を活用し輸送のさらなる安定性向上を実現します
全日本空輸株式会社（航空業界）
全日本空輸株式会社は、生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」を航空機オペレーション部門に本格導入し、業務効率化と安全性向上を進めています。空港・整備・客室・運航など複数部門での活用を計画しており、規程やマニュアルの検索時間は従来比で約90％短縮できる見込みです。
報告書や教育資料の作成時間についても、約75％の削減を見込んでおり、社員がより付加価値の高い業務に集中できる体制づくりを進めています。また、ANAが管理する自社クラウド基盤上で運用することで、機密情報を保護しながら現場ニーズに即したAI活用を実現しています。
三井住友海上火災保険株式会社（保険業界）
三井住友海上火災保険株式会社は、社内向け生成AI基盤「MS-Assistant」を開発し、業務変革と社員の意識醸成を進めています。リリース当初は文章作成やアイデアの壁打ちなどで活用していましたが、その後、商品・事務手続きのマニュアルを参照して照会内容への回答案を自動生成する機能を追加しました。
これにより「この特約の詳細を教えてください」といった代理店からの専門的な照会に対して、効率的かつ正確に回答できるようになっています。また、社員の意見を反映しながら機能を改善する仕組みを整えることで、社員の働き方改革にもつなげています。
出典元：ビジネス変革に向かう社員の意識を醸成 社内向け生成AI基盤「MS-Assistant」の挑戦
株式会社ひろぎんホールディングス（金融業界）
株式会社ひろぎんホールディングスは、生成AIを活用した業務効率化を進めています。子会社の広島銀行では、融資業務用の稟議書作成機能を内製で開発し、全営業店に導入しました。
企業情報や交渉記録をもとに生成AIが稟議書のドラフトを自動生成する仕組みで、年間約5,200時間の業務削減効果を見込んでいます。また、顧客との面談準備に必要な情報集約や確認の負担を減らすため生成AIを試験的に活用したところ、準備時間を従来比で7割削減できる見通しが得られました。
東急リバブル株式会社（不動産業界）
東急リバブル株式会社は、生成AIを活用した対話型チャットサービス「Tellus Talk（テラストーク）」を自社ホームページに導入し、顧客体験の向上を図っています。従来は、夜間など人員を配置できない時間帯についてはチャットボットで対応していましたが、一人ひとりに最適な提案ができないという課題がありました。
そこで、Web上で即時に回答できるAIチャットを導入し、幅広い相談にその場で対応できる体制を整えています。さらに、長年蓄積してきた不動産取引のノウハウをAIに反映させることで、プロの営業担当に近い水準の回答を提供し、サイト内回遊の促進や離脱率の改善にもつなげています。
出典元：東急リバブル、生成AIを活用した対話型チャットサービスの提供を開始
イオンリテール株式会社（小売業）
イオンリテール株式会社は、従業員向けチャットボット「AIアシスタント」を約390店舗で導入し、業務効率化を進めています。このAIは、従業員が音声や文字で質問すると、必要な情報を即座に提示する仕組みです。
そのため、新人や若手でもお客さま対応の困りごとをその場で解決しやすくなり、業務習熟の早期化にもつながっています。同社は今後もAIアシスタントの機能を拡張し、店舗で発生する幅広い問い合わせに対応できる仕組みへと進化させていく方針です。
出典元：次世代型“従業員マニュアル”生成ＡＩを活用した「ＡＩアシスタント」を実装
大分市（地方自治体）
大分市は、生成AIサービスを導入し、資料作成や内容確認にかかる時間の削減を図っています。これまでは、国からの膨大な資料の確認や行政文書の作成に多くの工数が必要でした。
しかし、生成AIを活用して要点整理や文章作成を効率化することで、職員が他の業務に集中できるようになりました。2025年4月時点では76課が日常業務に取り入れており、政策立案やメール文章の添削など、活用の幅も広がっています。
出典元：持続可能な行政サービス実現へ生成AIサービス「dailyAI」を導入。資料作成工数を大幅削減、本来業務に集中する時間を創出
生成AI活用の正しい進め方
生成AIを業務に取り入れる際は、以下の手順を意識してみてください。
- 何ができるか理解する
- 基礎的な知識を身につける
- 社員が学べる環境を整える
何ができるか理解する
AIにできることと苦手なことを把握していないと、想像していた成果が得られず、社内での使い方も定まりません。一方で、AIが得意とする分野が明確になっていれば、任せられる業務と人が担う作業を切り分けられ、導入をスムーズに進められます。
たとえば、資料のたたき台やメールの下書きはAIに任せ、最終的な判断や品質確認を人が担うといった役割分担がしやすくなります。そのため、業務での活用を検討している方は、まず生成AIの特性を理解しておきましょう。
生成AIの仕組みや活用方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事：生成AI（ジェネレーティブAI）とは？仕組みやできることを簡単に解説
基礎的な知識を身につける
生成AIを使いこなすには「どのように指示すると意図が伝わるか」「生成された内容をどう確認するか」といった基礎を押さえることが大切です。最初に基本を理解しておくと、思いどおりに動かない理由を探りやすくなり、業務の中で迷う場面も減ります。
書籍でも学習を進められますが、AIの分野は進化が著しく、情報がすぐに古くなるという特徴があります。そのため、最新の動向を確実に押さえたい方は、スクールを活用するのがおすすめです。
たとえば、アガルートの「生成AIコース」では、生成AIの概要からChatGPTの操作方法、実務への応用方法までを体系的に学べます。資料の自動作成や社内向けFAQボット開発など、実務に直結した演習も豊富で、習得したスキルをそのまま業務に活用できます。
社員が学べる環境を整える
もし、全社やチームで生成AIを活用する場合は、社員が学べる環境を整えることが重要です。個々のやり方で使い続けると、業務プロセスにばらつきが生まれ、情報漏洩にもつながりかねません。
生成AIを導入する前、もしくは導入直後に社内で学習する機会を設けると、社員ごとの知識の差を縮めながら活用の方向性をそろえられます。一度の研修でも効果はありますが、継続的に学ぶ場を用意することで、生成AIを積極的に活用する組織風土を形成できます。
生成AI研修について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事：【2025年版】おすすめの生成AI研修3選｜実施するメリットや選び方も解説
まとめ
この記事では、生成AIの活用事例や導入の進め方を解説しました。生成AIを正しく取り入れることで、作業時間を短縮できるだけでなく、ミスの削減や質の向上にもつながります。
また、社員が学べる体制を整えておくと、効率的に活用の幅を広げられます。そのため、生成AIを業務に生かしたい方は、他社の事例を参考にしながら自社の取り組み方を検討してみてください。
効率よくスキルアップしたい場合は、AIに特化したスクールを活用するのがおすすめです。たとえば、アガルートの「生成AIコース」では、ChatGPTの基本的な機能やプロンプトの書き方、具体的なAI活用事例などを体系的に学べます。
さらに、現役エンジニアに直接質問できるプランも用意されているため、学んだ内容をすぐに自分の業務に落とし込めます。今後はより多くの業界でAIスキルが求められるので、生成AIに興味がある方はスクールを活用して効率よく学習してみてください。
